大盛況に終わった大阪・関西万博。その中でもとりわけ人気だったパビリオンの一つがサウジアラビア館です。サウジアラビアから運んできた石材を使用したノーマン・フォスターによる美しい建築に、中東ではお馴染みのさわやかなスパイスを使用した中東料理が楽しめるサウジアラビア館のレストラン、テイクアウトカフェは連日大人気で長蛇の列でした。筆者もサウジアラビア館のテイクアウトに並び、サンドイッチやマンゴーローズソフトを楽しみました。万博終盤に大阪うめきた広場で、先日東京日比谷のミッドタウンで開催されたサウジアラビアのイベントも多くの日本人が訪れ、サウジへの興味・関心の高さがうかがえました。大阪・関西万博からサウジアラビアへ興味をもたれた方も多いのではないでしょうか。

中東最大の経済大国サウジアラビアは、石油依存からの脱却を掲げた国家改革VISION2030を推進しています。2030年に開催されるリヤド万博は、その象徴的なプロジェクトのひとつ。
巨大インフラ開発や観光立国への転換が進む今、サウジ市場は世界中から注目を集めています。本コラムでは、その背景とビジネスチャンスを考えます。

未来を創る砂漠の国、VISION2030とリヤド万博
サウジアラビアは、長年にわたり石油輸出に依存した経済構造から脱却し、2030年を目途に多角化を図る国家改革プログラムVISION2030を推進しています。これは、エネルギー・観光・インフラ・教育・テクノロジーといった幅広い分野での経済多角化を目指す国家プロジェクトであり、同国が次の時代の中東リーダーとして存在感を高めるための成長戦略です。この改革の象徴的なプロジェクトとして、首都リヤドにてリヤド万博が2030年10月1日から2031年3月31日まで開催される見込みです。この万博は、6 百万平方メートル規模の会場に195を超える国・地域が参加し、4 千万人以上の来場者を想定しており、持続可能性・スマートインフラ・文化交流という「変革の時代(The Era of Change)」のテーマのもとに開催されます。インフラ整備、観光開発、国際ビジネス誘致などが急速に進められています。首都リヤドでは新たな空港建設やメトロ整備が進行中で、NEOMをはじめとする超大型都市開発も同時に進行しています。

なぜビジネスに関わるのか
このような国家プロジェクトの中には、インフラ整備、輸送・物流、建設機械、電化製品、さらには観光・サービス産業など、多くの商材・領域が含まれています。日本の専門商社にとっては成長市場での供給機会を含んでおり、注目すべきビジネスフィールドです。たとえば、リヤド万博に向けたホテルの建設ラッシュやスマート都市インフラの整備は、電化・制御機器の輸出拡大につながる可能性があります。

市場の変化とチャンス
2024年には、サウジアラビアで観光入国者数が1億 1,600万人を超え、非石油セクターにおける観光・MICE・インフラの拡大が顕著に進展しています。
このため、建機・冷凍・空調・物流といった分野での国内需要が急伸し、また万博開催を契機とする長期的な都市開発・再開発も含めると、中東特化の商社にとっては中・長期の供給契約やパートナーシップ構築の好機が到来していると言えます。

留意すべきポイント
しかしながら、巨大プロジェクトにはリスクも伴います。商習慣、契約構造、資源・人件費の変動などを踏まえたリスク管理が不可欠です。また、万博終了後も活用される「レガシー(継承)インフラ」が計画されており、単発の納入だけでなく、維持・サービス体制までを見据えた提案が求められます。また、言語・文化・法制度の理解や、現地パートナーの選定、物流ルートの最適化など、実務レベルでの対応力が差別化ポイントとなります。サウジ政府は自国産業の育成を重視する「ローカルコンテンツ政策(Localization)」を強化しています。Vision 2030のもと、政府調達や公共プロジェクトでは国内製造・国内サービスの利用を優先する仕組みが導入され、外国メーカーが直接参入するハードルが高まっています。たとえば、政府契約では一定割合の部材やサービスを国内調達とすることが求められており、外国企業が競争に加わるには、現地パートナーとの連携やサウジ国内での生産・販売体制の構築が不可欠です。さらに、サウジ政府は「地域本社(Regional HQ)制度」を推進しており、政府系プロジェクトに参加する企業にはサウジ国内に拠点を持つことを条件としています。これにより、現地への直接投資を促す一方で、外国メーカーにとっては現地進出の戦略がこれまで以上に重要になっています。

商社としての視点
こうした環境変化は、単に参入障壁ではなく、日本企業にとって長期的な信頼関係を築くチャンスでもあります。高品質・高信頼を強みとする日本製品や技術は、サウジの産業基盤強化において依然として高い需要があります。現地企業との協働、製品の共同開発、現地代理店を活用した販売など、ローカルに根ざしたビジネスモデルを構築することが成功の鍵となるでしょう。当社は中東・アフリカ地域での輸出・貿易実績を通じて、地域特有の商習慣や手続き、物流基盤を把握しています。この地に足のついた知見を活かし、商社としてご支援いたします。

出典:
-Saudi Vision 2030,
Saudi Vision 2030〉,(2025年11月5日).
-サウジアラビア公式ウェブサイト,リヤド万博2030
リヤド万博2030 – 公式ウェブサイト Visit Saudi〉,(2025年11月5日).
-Al Arabiya English, Saudi Arabia’s Expo 2030 fuels surge in business, event travel across the Kingdom Tamara Abueish
Saudi Arabia’s Expo 2030 fuels surge in business, event travel across the Kingdom〉,(2025年11月5日).
-Scientific Research, Riyadh’s Renaissance: Expo 2030 as a Springboard for Intercultural Understanding, Tourism Revival, and Sustainable Solutions
Riyadh’s Renaissance: Expo 2030 as a Springboard for Intercultural Understanding, Tourism Revival, and Sustainable Solutions〉,(2025年11月5日).
-Dga, Saudi Arabia Increases Emphasis on Localization With New Saudization Measures
Saudi Arabia Increases Emphasis on Localization With New Saudization Measures – DGA〉,(2025年11月5日).

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太洋物産では、長年にわたりサウジアラビア・ドバイをはじめとした中東・アフリカ諸国との取引を通じて培った経験とネットワークを活かし、現地の市場動向や商習慣を踏まえた貿易事業を行っています。

現地企業との豊富な取引実績をもとに、複雑な貿易手続きから販売支援まで一貫して対応。
日本企業の「海外担当」として、現地パートナーとの長期的な信頼関係を築きながら、持続的なビジネス展開を支えています。
中東向けの製品展開や市場開拓をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。